衝撃波の医療応用では、衝撃波照射した生体の微視的な反応を明らかにすることは重要な基礎研究課題となっている。本研究はその一環として、衝撃波照射で細胞内に誘起される物質を特定することを目的にする。一般に衝撃波治療では、生体に照射・収束する衝撃波の高圧位置は数10ミリの広がりを持って分布し、少なくとも高圧作用点をミリメートル以下に特定出来る実験法はなかった。この実験は、長短径比1.41の半切回転楕円体容器内部の焦点で、直径0.1〜0.3mmのアジ化銀2〜20マイクログラムを直径0.6mmの石英光ファイバー先端に貼付け、パルスNd:YAGレーザー光を照射して起爆し発生する球状衝撃波を容器の外部の焦点に位置のばらつき0.1mm以下の精度で収束させ、高圧5〜15MPaをサブマイクロ秒間発生する方法を開発し、衝撃波を、頭蓋骨を切除したネズミ脳の指定位置に収束作用させる極微小の衝撃波照射法の確立と応用である。また、この技術を支援する数値模擬法の開発と直径0.1mmの光ファイバー圧力計での計測で、定量的な実験と数理モデルの一致を導いている。 衝撃波を作用させてネズミを短期間生存させ、屠殺後衝撃波照射点の神経細胞の応答を検索し、特に損傷機序と損傷閾値を組織学的に検討し、10MPa以上で照射部位に壊死が起こり、その周辺に細胞死が起こり、また1MPa前後で核の形態学変化が認められ、損傷閾値は1MPa程度となることを明らかにした。
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