神経回路電気活動の時空間計測手法である電極アレイ法を利用し、この基板上での網膜-視床(上丘)-大脳皮質視覚野から成る視覚情報処理系再構成を目指す。基板電極を通じた電気活動記録・刺激により、系を構成する各段階における情報処理機能とその可塑性に関する知見を得ること、その延長上に再生医療への応用を想定している。計画初年度の平成17年度は、(1)切片試料の電気活動計測に最適な電極基板製作プロセス、(2)網膜切片試料からの電気活動記録、の2点につき検討した。 (1)電子デバイスの実装分野で用いられる3次元加工技術の応用を試みた。フォトリソグラフィによりサイズ40x40μmのITO(透明導電性材料)電極64個を8x8のアレイ状に配置したパターンを製作した後、金を材料として電極先端部分に直径40μm、高さ50μmのスタッドバンプ構造を形成、これを集束イオンビームによって加工するプロセスにより、先端径1μm、長さ10μmの針状構造を作製した。新生ラットから採取した網膜試料を用いた実験により、神経スパイク信号が計測された。 (2)新生ラットから採取した網膜試料を30x30μmの電極64個を集積化した平面基板上で培養し、自発電気活動の記録を試みた。神経節細胞由来と思われるスパイク信号が記録できた。バースト的な発火パターンを示すがニューロン間での同期性は認められないこと、単離培養系で見られる典型的な細胞外記録信号とは極性の異なる波形が観測される場合が多いことがわかった。 以上、立体・平面両方の基板で視覚情報処理系の電気信号記録が可能となる見通しが得られた。
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