研究計画最終年度となる平成19年度は、視覚系を構成する網膜と上丘試料の共培養条件確立に引き続き、培養細胞系の自発、誘発活動計測を実施し、成果のとりまとめを行った。視覚機能が十分発達したadultラットから採取した網膜試料を用いることにより、光刺激に対する応答が計測可能であることを確認したが、この時期の試料は培養系には適さないことが明らかになった。これに対し、新生ラットから採取した試料を利用することにより、網膜、上丘の共培養が可能となることを確かめた。網膜試料については神経節細胞からの自発電気活動が記録され、また上丘についても自発電気活動の発生が確認された。外部からの電気刺激によりこれらの活動が変化することが観測され、今後、大脳皮質視覚野を含めた共培養系に進む基礎的条件が確立された。また、異なる試料を1つの基板上で制御性よく共培養することを目指し、基板表面の微細加工手法の開発を進めた。基板上にアガロース薄膜を利用した細胞非接着性の領域と接着性のポリリジン塗布領域を設けることにより、複数の試料を同一基板上に配置することを可能にした。細胞接着領域の構築にはカオトロピック効果を利用する手法を開発し、これをインクジェット方式で位置制御することにより、多数の細胞培養ウェルを短時間に再現性よく製作する手法を確立した(電気学会論文誌Cに発表)。
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