研究課題/領域番号 |
17650134
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐野 庸治 広島大学, 大学院工学研究科, 教授 (80251974)
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研究分担者 |
近江 靖則 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (50313713)
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キーワード | リン酸カルシウム / 界面活性剤 / メソ構造体 / 無機多孔体 / 混合溶媒 / ラメラ構造 |
研究概要 |
リン酸カルシウムは生体適合性を有することから、人工骨、人工歯根、食品添加物、生体高分子の吸着・分離剤およびカラムの充填剤として利用されている。しかし、その比表面積が100m^2前後と小さいことから、様々な手法による高表面積化が試みられている。ところで、1.5〜100nmの均一な細孔径および1000m^2に及ぶ高表面積を有するメソポーラスシリカは、界面活性剤の有する自己組織化作用と無機種との弱い相互作用を利用して合成される。また、この時得られるメソポーラスシリカの構造は、ラメラ構造、ヘキサゴナル構造およびキュービック構造と用いる界面活性剤の種類を変えることにより自由に制御可能である。そのためメソポーラスシリカ以外のメソポーラス物質の合成に関する研究が盛んに行なわれている。本年度は生体適合性機能材料であるリン酸カルシウムの高機能化を目指し、界面活性剤を用いたリン酸カルシウムメソ多孔体の合成の可能性について検討した。その結果、溶媒にEtOH-H_2O混合溶媒、界面活性剤に1級アミンを用いることで、結晶性リン酸カルシウムであるbrushiteおよびmonetiteの生成を抑制し、ラメラ構造を有するリン酸カルシウムメソ構造体が合成できることを初めて見出した。これは、混合溶媒を用いることによりリン酸イオンとカルシウムイオンの相互作用が弱くなり、逆に界面活性剤とリン酸イオンおよびカルシウムイオンとの相互作用が可能となり、これらの結晶性リン酸カルシウムの生成が抑制されたためと考えている。すなわち、結晶性リン酸カルシウムの生成を如何に抑制できるかがリン酸カルシウムメソ構造体合成の最大のポイントであることが明らかとなった。 そこで、来年度はこの推論の妥当性を確かめるとともに、界面活性剤の種類を変化させラメラ構造以外のヘキサゴナル構造やキュービック構造のリン酸カルシウムメソ構造体の合成を検討する。また、界面活性剤を取り除いたリン酸カルシウムメソ構造体の構造、吸着能、生体適合性等をも明らかしたいと考えている。さらに、混合溶媒を用いる本方法以外の結晶性リン酸カルシウムの生成を抑制する方法を確立し、メソ構造体の合成範囲の拡大を狙う。
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