研究概要 |
荷重を支持する生体組織は力学的に最適化されている場合の多いことが知られている.例えば骨は最小の材料で最大の強度を示し(Wolffの法則),内部の骨梁は主応力方向を向いて並んでいると言われている.そこで,生物の有するこのような形作りの性質をものづくりに応用できないかと考えた.このため,まず,弾性膜上に細胞を播種し,この膜に二軸の引張を加える装置を開発するとともに,細胞の配向をそろえる方法の検討を行っている.すなわち,現有する細胞伸展負荷装置にリンク機構を組み込み,2軸同時ならびに交互の繰返引張が加えられるように改造した.この装置を用いて培養血管内皮細胞に繰返変形を3時間程度加えることで,細胞の長軸方向が繰返ひずみが最小となる方向に配向し始めることを見出した.しかしこのことは血管平滑筋細胞の細胞長軸方向には繰返引張を加えられないことを意味する.そこで,細胞が溝に沿って配向する性質を有することを利用し,シリコーンゴム膜表面に50μm間隔程度の畦を作製し,この上で細胞を培養したところ,細胞長軸方向に6時間以上10%のひずみを負荷し続けることができることを見出した. 次に,種々の細胞の繰返変形負荷に対する応答を観察するために,血管内皮細胞,血管中膜平滑筋細胞,骨芽細胞様細胞,骨髄細胞を弾性シート上に播種し,単軸繰返引張を24〜72時間程度加え,細胞全体の配向状態ならびに個々の細胞の形態を観察した.その結果,血管内皮細胞と平滑筋細胞は引張と直交する方向に伸張・配向するのに対し,骨芽細胞様細胞は引張方向に配向すること.また,骨芽細胞の配向には顕著な影響が見られないことを見出した。
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