研究概要 |
1000倍の拡大率で、個々の細胞レベルでの観察が可能である共焦点内視鏡を用いて、異常所見のある消化管粘膜を細胞レベルで観察し、リアルタイムに良悪性の診断をつけることを試みた。 共焦点内視鏡はOptiscan Imaging社(VIC, Australia)とPentax社が共同開発し、通常内視鏡の光学観察部と共焦点レーザー内視鏡装置が一体化しており、内視鏡検査中に通常の内視鏡画像と共焦点画像を併行して見ることができる。個々の細胞は白黒のコントラストがついたものであるが、核と細胞質が明確に区別でき、相対的な濃淡から細胞の種類を判別することも可能である。1)切除標本での観察:胃癌30例、大腸癌32例の切除標本の粘膜に蛍光色素のacriflavineおよびtetracyclineを散布して共焦点内視鏡で観察した。細胞の核が染まり、正常粘膜の腺管構造が癌部では失われていた。画像解析ソフト(Scion image)により核の大きさを面積で算出し、正常組織と癌組織を比較した。acriflavineとtetracyclineによる核の面積は互いに有意に相関し、tetracyclineの生体への使用と画像解析が可能であることが明らかになった。画像診断で即時に癌と診断可能な症例は胃癌の高・中・低分化型でそれぞれ60%,60%,43%、大腸癌の高・中分化型でそれぞれ90%,63%であった。2)生体内での観察:上部消化管内視鏡を胃癌5例に行い、蛍光色素のtetracyclineを局所散布して、胃粘、膜の観察を行った。癌部では明らかに組織構築の破壊が認められた。 共焦点内視鏡を用いてリアルタイムに粘膜細胞の観察が可能であり、細胞核の面積を画像解析することにより、過半数の症例で正常粘膜細胞と癌細胞を区別することができた。 以上の内容を第37回胃病態機能研究会および第64回日本癌学会総会で発表し、現在論文投稿中である。
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