研究概要 |
消化管粘膜を1000倍にまで拡大し、個々の細胞が観察できる共焦点内視鏡を用いて、異常所見のある消化管粘膜を細胞レベルで観察し、リアルタイムに良悪性を画像診断することを試みた。 共焦点内視鏡(Optiscan Pty Ltd.and Pentax Corp.)は、通常内視鏡の光学観察部と共焦点レーザー内視鏡装置が一体化しており、内視鏡検査中に通常の内視鏡画像と共焦点画像を併行して見ることができる。個々の細胞は白黒のコントラストがついたものであるが、核と細胞質が明確に区別でき、相対的な濃淡から細胞の種類を判別することも可能である。1)切除標本での観察:胃癌27例、大腸癌33例の切除標本の粘膜に蛍光色素のacriflavineを散布して共焦点内視鏡で観察した。細胞の核が染まり、正常粘膜の腺管構造が癌部では失われていた。画像解析ソフト(Scion image)により核の大きさを面積で算出し、正常組織と癌組織を比較した。画像診断で即時に癌と診断可能な症例は胃癌27例中18例(67%)(Endoscopy 38:886-890,2006)、大腸癌33例中23例(70%)であった。胃癌細胞の分化度でみると、高・中・低分化型でそれぞれ89%,60%,40%の診断率であり、大腸癌では高・中分化型でそれぞれ78%,60%の診断率であった。分化度が高いほど、癌細胞の核面積が大きく、悪性診断がつけやすい傾向が認められた。2)生体内での観察:上部消化管内視鏡を胃癌5例に行い、蛍光色素のtetracyclineを局所散布して、胃粘膜の観察を行った。癌部では明らかな組織構築の破壊と新生血管が認められた。acriflavineとtetracyclineによる核の面積は互いに有意に相関し、tetracyclineの生体への使用と画像解析が可能であることが明らかになった。共焦点内視鏡を用いてリアルタイムに粘膜細胞の観察が可能であり、細胞核の面積を画像解析することにより、過半数の症例で正常粘膜細胞と癌細胞を区別することができた。
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