研究概要 |
X線CTスキャナは1970年代に開発され、現在に至るまでに著しく改良が進み、普及している医療画像診断装置である。しかしながら、その画像再構成アルゴリズムは基本的には初期の原理のまま、フィルタ逆投影法に基づくものが主流である。物質は可視光線の波長領域のみならず、X線波長領域においても、波長(エネルギー)毎に吸収係数が異なり、透過X線のスペクトル分布は物質の種類に個有である。即ち、各物質はX線領域で固有の色を持っている。しかし、従来のアルゴリズムにおいては、本来X線管球が連続スペクトルを照射しているにも関らず、実効エネルギーに単色化した定式化が用いられており、求められる吸収係数も位置のみの関数であり、エネルギーに関する分解能を持っていない。従って出力される画像においては色情報が捨て去られており、基本的に白黒画像となっている。3次元表示などを行う際等に疑似的な着色を行っているに過ぎない。 本研究では、生体を構成する物質毎に異なる吸収係数のエネルギースペクトル情報を捨て去る事なく出力画像に反映させる事を目的とする。エネルギー情報を利用する方法として,Dual-Energy Method (DEM)が有効であるが,複数の管球を用いた特殊な装置や計測が必要となり,実際に導入することを検討すると,技術的,コスト的な面からも問題が生じる.本年度では,通常のCTでX線照射口に装着されている左右対象な形状の吸収体フィルタ(Bow-Tieフィルタ)を左右非対称なものに交換することで効率的にDual-Energy CTを実現できる事を見出し、数値シミュレーションによりその可能性を確認した。
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