研究課題/領域番号 |
17650157
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関 和則 東北大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (20206618)
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研究分担者 |
半田 康延 東北大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00111790)
関 隆志 東北大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90372292)
山村 裕明 東北大学, 病院・助手 (00400375)
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キーワード | 嚥下障害 / 治療的電気刺激 / videofluorography / MRI / 超音波断層法 |
研究概要 |
本研究は、中枢神経疾患にともなう嚥下障害を簡便に評価するための超音波断層法の有用性を明らかにし、また誤嚥防止のための電気刺激治療の手法を確立することを目的とした。 本年度は、脳卒中等による嚥下障害のために、経口摂取困難な患者6名を対象として、顎下部の舌骨上部皮膚上に専用の小型電極を対称的に貼付し、低周波治療器「のどか」を用いて、毎日1回15分間の電気刺激治療を実施した。刺激周波数は3Hz、刺激強度は運動閾値上で痛みのないレベルとし、5秒刺激5秒休止の刺激サイクルを用いた。治療期間は2週間とし、その前後で、超音波装置とMRIによる咽頭部形状の撮像、videofluorography (VF)を実施した。VFでは、造影剤入りのゼリーを用い、喉頭、喉頭蓋、舌骨および造影剤先端の動きを二次元動作解析ソフトによって分析した。またコントロールとして、健常成人6名にっいても、電気刺激前後の超音波測定、MRI撮像、VFの解析を実施した。健常者では、X線透視上で、電気刺激中に舌骨と喉頭の前上方への移動が観察され、刺激による舌骨上筋群の収縮が生じることが確認された。超音波測定では咽喉頭部の形態的な変化を確認することはできなかったが、MRIでは前年度の研究結果と同様に、刺激後に口腔・咽頭のスペース拡大を認めた。VFの二次元解析では、造影剤の喉頭蓋谷への侵入から舌骨の上前方移動開始までの時間(VS時間)と、舌骨の移動開始から造影剤の食道侵入までの時間(SE時間)を指標として、電気刺激前後の変化を分析した。健常者に比して、嚥下障害患者群ではVS時間、SE時間とも著明に延長していたが、一回の電気刺激直後には有意な短縮を示した。また刺激6時間後でもこの効果は同様に持続した。治療2週間後のVS時間、SE時間は初回治療時と変わらず、刺激による蓄積効果はみられなかったが、臨床的には全例について明らかに嚥下障害の改善が認められた。 超音波断層法による嚥下障害の簡便な評価手法の確立にはいたらなかったが、嚥下障害治療のための新しい表面電気刺激手法の臨床効果を示すことができた。本研究で用いた方法は、海外で用いられている方法に比して安全性と治療効果の確実性に優れており、有用な手法と考えられる。
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