高齢者の情報機器に対する意識や経験、普段の生活状況の実態を把握するため、大和市老人クラブ連合会の協力のもと、高齢者約50名のアンケートを実施した。その結果、約6割が携帯電話を所有していたが、電話機能しか使っていない人が多く、多機能すぎて使いづらい・通話料が高い・ディスプレイが小さいといった意見が多く出た。8割以上の人が週に3回以上外出しており、活動的な生活を送っているが、機能が複雑すぎて携帯電話を使いこなそうという意識にならないことがわかった。 それに基づき、携帯電話使用のどこに難しさが存在するのか、操作のプロセスをPC上で実現した装置を作成し、6名の被験者に対して、一定の操作を依頼し、どこでつまづくか、どのようなアシストをすると操作ができるか、などの計測実験を実施した。携帯電話所有の1名を除き、無支援での操作はできず、操作履歴や後のインタビューから、ボタンの意味、操作の流れに必要な項目の意味の理解、メニューの階層構造の理解が難しいということがわかった。操作の改善案を提案し、同一被験者でその効果を検討したが、その改善案はごく一部の人にしか有効でなく、携帯電話使用のハードルを下げるためには、本質的な機能の説明と理解が必要なことがわかった。 移動支援システムの実現に向けては、携帯電話のユーザビリティ向上ならびにそこに載せる情報の質が問題になるため、次年度はその課題に向けて、高齢者側の能力との関係で検討を続けていく。
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