研究概要 |
今年度は教育現場でできる軽度発達障害児の作業療法評価で使用する下位検査を作成し,発達検査としての妥当性を健常児データと比較し検討を行った。検査は行為機能(Praxis)に関連する身体図式3検査,シークエンス記憶と運動3検査,両側統合4検査,構成能力2検査,口腔運動行為2検査の計14の下位検査を作成した。検査道具を8セット作成し下位検査が発達検査としてふさわしいか否かを判断するために,4歳〜10歳の健常児計120名のデータを収集した(各年齢は約15名,男女半分づつ)。検査は10名の作業療法士に依頼(謝金等は不要であった)し,検査場面はすべてビデオ録画し,検査データはビデオにより3名以上で分析を行い,コンピューターに入力した。月齢と検査の得点に有意な相関があるか否かをSpearmanの順位相関により解析を行った。その結果,14の検査のうち身体図式1項目を除く13検査が年齢と下位検査の得点に有意な相関(p<0.01)を示した。相関係数は身体図式2検査0.72,0.71,シークエンス記憶と運動3検査0.77,0.68,0.66,両側統合4検査0.78,0.64,0.62,0.64,構成能力2検査0.82,0.84,口腔運動2検査0.42,0.61であった。すべての検査にかかる時間は平均45分(一つの下位検査に要する時間は3〜10分)であった。検査に含まれるそれぞれの下位検査項目が難易度順になっているか,下位検査の開始項目,終了時期の検討も行った。シークエンス記憶1項目,構成能力2項目に年齢により開始項目,および連続誤答による終了時期を設定した。また,下位項目の中で得点と年齢に有意な相関がないものは削除し,項目数の削減を行い13の検査を決定し,検査マニュアルと検査用紙を作成した。次年度は正常児のデータを増やし,検査の信頼性を高めるととともに,軽度発達障害児に活用し行動,教科学習との関連,他の発達検査との関連等を検討していく。
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