申請者らは、足切断患者の足を再生させること、すなわち足部切断面の幹細胞を活性化して骨、軟骨、靭帯、筋、腱、神経をそれぞれ誘導し、各組織を再構築することにより機能する足を再建する方法の確立を究極の目的としている。本申請における研究では、そのための基礎的検討として、切断肢の再生能力を持つ両生類に着目し、切断肢断端における組織再生過程における遺伝子発現様式を詳細に解析することを目的とする。両生類の切断肢組織再生過程で発現する遺伝子を同定した後、哺乳類(マウス、ラット)の切断肢の断端におけるそれら遺伝子の発現様式を観察するとともに、それら遺伝子を強制発現させるための方策を検討すること目的とした。 平成17年度においては、有尾目両生類(イモリ)の下肢を切断し、切断端に形成された再生芽の中で増殖因子として中心的役割を担っていると考えられるapical epidermal capのDNAを注目した。すなわち、成熟イモリを対象とし、エーテル吸入による全身麻酔下あるいは四肢冷却による局所麻酔下で前肢あるいは後肢の切断を行った。切断の直後、6時間後、12時間後、24時間後、2、3、4、5日後、1週後、2週後、3週後の各ステージにおいて、イモリを過量麻酔薬吸入で安楽死させた後、下肢断端部の組織を採取し、その変化を記録するプロトコールに従い、実験を実施中である。まず、四肢切断前イモリの飼育における最適な条件(水質、温度、餌、水槽あたりの固体数)、切断方法、切断端への感染防止対策について徹底した検討を行った。その結果、これら飼育条件、切断方法、切断端への感染防止法を確立しえたので、現在は、切断後の各ステージにおける切断端部の変化の記録(四肢運動能力のデジタルビデオ記録、それらのコンピュータでの記録・解析も含む)、組織採取の実験を実施・継続中である。
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