研究概要 |
本研究では,動作調節機能を対象とした新しい運動療法やその効果・有効性を評価する方法を構築するための基礎研究として,訓練による学習・習熟過程の模擬・再現も視野に入れた神経筋系の数理モデルを開発することを目的としている.このため,特に下肢の運動状態や筋出力状態,およびその学習過程を模擬・再現できる神経筋系モデルを構築することに焦点を絞って進めてきた。前年度は脊髄レベルの機能的神経回路で左右交番的な運動リズムを生成する上で重要な役割を果たすと考えられているリズム生成機構を、2つの神経振動子からなるCPGとしてモデル化した。今年度はこのモデルにフィードバック制御、フィードフォーワード制御、予測制御の機構を組み込むため、基本パラメータを決めるための実験を実施した。様々なリズム周期(周期30秒〜0.5秒の12段階)でヒトが目標を追従する動作(立位で身体を左右にリズミカルに動かす運動)を運動計測装置、筋活動計測装置、側圧中心計測装置を用いて測定した。その結果、リズム周期が30秒から2秒に近づくにつれてリズム運動を修正・調節する要因が外的なものから内的なものに徐々に変化し、周期が0.8〜2秒の範囲では主に内部モデルに基づいた目標リズム追従が行われている可能性が見いだされた。この結果をもとにフィードバック制御ループを支配するパラメータがリズム周期の増加に伴って弱くなり、逆に予測制御ループを支配するパラメータが1Hz前後でもっとも強くなるような機構を設け、神経新藤氏を改良した。これにより、リズム追従機構におけるフィードバック制御、予測制御およびそれらの切り替わりを適正に表現できるモデルを構築することができた。
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