本研究は、研究者が開発した測定値を規格化する方法(以下「ブラックボックス法」)を基礎として、条件の異なる複数の選考レースの中から真に強い選手を公平に選考する方法を確立し、当該方法論を活用して北京五輪のマラソン代表選考を円滑に行なおうとするものである。 当該目的を推進するため、平成18年度は以下の研究及び活動を行った。 (1)ブラックボックス法の妥当性の検証 運動生理学に関する研究は実験結果を基礎として帰納的に構築されるのに対し、ブラックボックス法は数学的一貫性を根拠として演繹的に確立された理論であり、その妥当性は運動生理的裏づけにより検証されるべきものである。当該方法論が学術的に名誉ある地位を占めるために、過去の大会への適用と解析及び多くの関係者との議論に基づき、問題点の洗い出しとその解決を図った。 (2)Webシステムの開設による補正タイム提供サービスの開始 平成18年6月末に各マラソン大会における実際の結果(以下「実走タイム」)とそれを規格化した記録(以下「補正タイム」)を併記して提供するシステムを開設し、当該情報を公に提供するサービスを開始した。当該サービスは情報処理に必要なデータである持ちタイムの入手が容易なエリートマラソン大会から開始したが、各大会の主催者の協力を得て、順次、多くの市民マラソンへとサービスの範囲を拡大する予定である。 (3)世界選手権代表選考レースにおけるシミュレーション実施 2007年8月に大阪で開催される世界選手権の代表選考レースについて、アジア大会を除く全大会について補正タイムを算出し、大開修了後に速やかにWebサイトにて提供した。当該選考レースは猛暑・氷雨・強風等の全く異なる条件下で開催されており、記録の比較が極めて困難な状況であったが、補正タイムが客観的なデータとして合理的な選考に寄与したことは疑いの余地がない。
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