研究概要 |
受動的に短時間四肢を動かすと呼吸・循環機能が一過性に亢進することを利用し、寝たきり老人の身体諸機能など生活全般の質の改善を目標とした「パッシブ・リズミック・エクササイズ」の開発を最終目的として、今年度はまず健康な若年成人を対象に効果的な運動方法を開発するための2つの実験を行い、基礎的データを収集した。まずどのような頻度(速度)で受動的運動を行うのが効果的かを明らかにするために、8名の被検者に椅座姿勢を取らせ、検者が被検者の脚を交互に20秒間引っ張る受動的運動を90,120,150rpmの頻度で行った。その結果、運動頻度が高い(速度が速い)順で運動開始20秒間の換気・心拍応答が高い傾向が認められ、早い頻度で受動的運動を行った方が呼吸・循環応答を高めるのに効果的であることが明らかとなった。しかし実際面では早い頻度では検者がテンポに合わせるのが困難なことや被検者の関節に負担がかかる可能性があること、頻度による差はそれほど大きくないことなどから、高齢者に応用する場合は遅い頻度でも十分効果があることが示唆された。次にどのような部位に行うのが効果的かを明らかにするために、仰臥姿勢で医療用のベッドで膝を約70度に曲げた状態から検者による受動的な両脚の膝伸展運動、膝の引き上げ運動、膝を伸ばしての足底屈運動、肘の屈曲運動、胸の前に上げた腕を横に開くバタフライ、肘を伸ばして肩関節を動かすプルオーバーの6種類の受動的運動を、100rpmの頻度で7名の被検者に20秒間実施した。その結果、プルオーバー、バタフライ及び膝の引き上げ運動において換気・心拍応答が高い傾向が認められた。しかし、仰臥姿勢のために心拍応答が弱いことや、被検者によってはあまり応答しない場合もあることから、なるべく上体を起こした姿勢で実施することや被検者や種目の特性に合わせて頻度を変える必要のあることが示唆された。
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