研究課題
エネルギー代謝は、体内から発生する熱流によるところが大きい。理論的には、熱流移動の大小がエネルギー代謝を推定できることは明らかである。しかしながら、実際には発汗や衣服の影響を大きく受けることになる。熱流でエネルギー代謝を推定あるいはわずかな誤差で知ることができれば、マスク装着などの煩わしさもなく、操作の熟練も必要なく簡便にエネルギー代謝量を知ることができる。そこで初年度は、仮説として上腕の熱流量がエネギー代謝を反映すると考え、市販されている熱流計を用いて体内から発生する熱流量を運動中の酸素摂取量と比較検討した。対象者として健常成人10名に熱流計を上腕に装着し、自転車エルゴメータでランプ負荷を加えた。その結果、個人については、運動負荷中の熱流量は、運動負荷量に比例して増加し、酸素摂取量の増加とも相関が得られた。熱流量と酸素摂取量から換算したカロリーは一致するはずであるが10名中6名のみ10%の誤差で一致した。しかしながら、時間的遅れが30秒程度あり、さらに個人差が大きく、運動負荷に対する変化の割合も異なっていたため、個人ごとに実験式を作成する必要が示唆された。今回の計測では発汗の影響がわずかであったが、環境温度の影響で発汗が多い場合には、蒸散により熱を奪われるため低い値を示すことも明らかとなった。仮説とした熱流量からのエネルギー代謝の推定の可能性は示されたが、今回の計測の問題点としては、1)熱流量計測の部位、2)基礎代謝量の計測に対する精度、3)発汗や環境温度、湿度の影響があげられた。さらに個人差がでたことによる補正をいかにするかが大きな検討課題となった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Journal of Clinical Engineering, 30(3):,
ページ: 145-152