研究概要 |
平成17年度の研究計画は、1)研究仮説を実証するためのソーシャルキャピタルという概念の検討、2)韓国並びに台湾の教育経験者から,各国の教育事情と学校事情,生徒の意識や行動に関するヒアリングを行い、3)台湾、韓国、日本における予備的調査を行うことであった。 ソーシャルキャピタルという概念は、未だ制度・政治的なマクロ変数という捉え方と社会経済的な個人変数という捉え方が混在している。インフォーマルな力による社会秩序の維持、社会的援助、信頼関係などがその中核であるが、本研究では、そのようなソーシャルキャピタルの構成要素は近隣地域(生活圏),家庭,学校の風土・環境に根ざしたものであると考え、中学生、高校生がどのようにそれらを認知しているか探ることにした。中学生、高校生自身が身近な地域環境、家族環境、対人的環境をどのように認知しているのかは、よく知られていないことが文献で指摘されていたので、予備的調査研究として自由記述形式の質問紙を作成し、台湾語、韓国語に翻訳して、日本を含めた3カ国で中学2年生、高校3年生を対象に、各国の各学年それぞれ100名以上の回答を得た。調査時期は、台湾10月、韓国12月、日本12月であった。調査の性質上、いずれの学校も比較的学力が高い学校を選んだ。調査内容は、身近な地域環境の良い点、悪い点、ふだんの居場所とそこで影響を受けている人間関係、家族関係の良い点、悪い点、将来の希望とそれに対するジェンダーによる影響である。台湾、韓国の回答を翻訳し、現在、質的データ分析の方法を用いて分析中である。台湾のデータでは、ソーシャルキャピタルの中核概念からすると、「不良のたむろ」「公共のルールの無視」などインフォーマルな力によって社会秩序を維持できていない点、隣人や教師・生徒、家族の援助関係、プラスに働く生徒同士の競争関係、家族の期待から受けるプレッシャーなど興味深い記述に富む。
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