研究概要 |
平成19年度には、バンクーバー(カナダ)で開催された第19回IUHPE国際会議で、"Qualitative research on early adolescents'views of their neighborhood environments and neighborhood-based social capital in Japan, Korea, and Taiwan."と"Early adolescents'views about their school and school-based social capital in Japan, Korea, and Taiwan"の2本の研究発表を行った。これらの研究は、中学高校生が地域環境、学校環境をどのように認識しているかを明らかにしたものである。いくらか、社会文化により日本と韓国、台湾では異なる面があったものの、かなり類似していることが明らかになった。すなわち、同一の質問紙調査票で量的に調査し、比較検討が可能であることが示された。 そこで、中学・高校生のソーシャルキャピタルと健康の関連を検討する質問紙を、日本語から台湾語と韓国語に翻訳し、4月に台北市(台湾)、7月にはソウル市(大韓民国)の中学、高校で調査を行った。さらに、日本の大都市部の学校のデータを補うため、9月から11月にかけて国分寺市、杉並区の中学校で実施した。日本では中学生2,002人、台北市では中高生1,029人、ソウル市では中高生420人の回答が得られた。まだ、分析の途上であるが、たとえばソーシャルキャピタル概念の中核である一般的信頼感「世の中のたいていの人は信頼できる」は、宮古市の中学生では55.5%が「あまり/全くあてはまらない」と回答していた。大都市部近郊の市川市では62.1%、都心の杉並区では64.9%と不信の割合がやや高いが、郊外の国分寺市では55.6%であった。また、一般的信頼感(低いほど高スコア)とCES-Dによる抑うつ度の関係を、性別をコントロールした偏相関係数で検討した結果、0.24〜0.35(p<0.0001)と有意な関連が認められた。地域環境が、生徒の一般的信頼感に影響し、精神健康を左右する要因となっていると推測された。今後、台湾、韓国のデータを合わせて詳細な分析を行い、関連性を実証していく予定である。
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