研究概要 |
肥満は,先進国を中心に世界的な広がりを持つ重要な健康問題であり,日本においてもその増加傾向が懸念されている。そして,成長過程において肥満が顕在化してから対処するのでは遅く,より早い段階で発見すること,その要因を分析しながら効果的な対処法を検討し,生活改善に取り組むことは,保育・教育において,重要かつ現代的な課題である。本研究では,幼児期における毎月の縦断的な発育データから,一般的な体重増加を逸脱した場合に,どの程度,肥満化が進行するのかを検証していくこと,睡眠・遊び・食事等の生活習慣,運動実施状況,保護者の養育態度,遺伝,ストレス状態などの背景要因が幼児の肥満化に及ぼす影響について,その関連性を構造的に分析することを目的としている。 平成17年度は,幼稚園・保育園に通園する5歳児のBMIの年間変動を元に,3月時点におけるBMIの状況により「高位群」,「中位群」,「低位群」の3群に分類し,各群のBMI年間変動パターンと変化量を検討した。その結果,「高位群」の幼児では,男児・女児ともに夏季以降上昇傾向を示し,3月時点のBMIは4月時点より高くなること,「中位群」・「低位群」では,春から夏にかけてやや減少し,夏から秋に増加,冬にやや低下する変動パターンとなることなどの特徴を示した。今後対象児数を増やしてさらに検討する予定である。 肥満化の背景要因については,4・5歳の幼稚園児を対象として,運動・食事・睡眠などの生活習慣,保護者の養育態度,生理的指標としてコルチゾールの分泌量などの調査と測定を実施した。現在はその入力及び分析を行う段階である。今後,BMIが早期に増加していく幼児の生活習慣等の特徴や保護者の養育態度との関連性について分析を行う予定である。
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