研究概要 |
今年度は,(1)暫定的な筋量の基準値を用いてsarcopcniaの年代別分布を確認し,(2)筋量と脂肪量を考慮した体格分類と身体活動量及び(3)筋力の縦断変化との関連を検討した. 対象は,「国立長寿医療センター・老化に関する長期縦断疫学研究;NILS-LSA」の第一次調査に参加した40-79歳の男女約2300名である.身体組成はDXAで測定し,四肢筋量を身長の二乗で除したASM/HT^2(appendicular skeletal muscle mass/height^2)を算出した.対象者は,筋量と脂肪量の境界値から4つの体格群に分けられた.身体活動量は質問紙による聞き取り調査を行い,筋力は握力,膝伸展筋力の6年間の縦断変化について分析した. 主な結果は以下に示す. 1.年代別のsarcopeniaの分布 筋量の境界値(性別の40歳代前半におけるASM/HT^2の20%tile)を用いたsarcopenia判定において,男性では年代が上がるとsarcopeniaの割合が増し40歳代で約18%,70歳代で約42%であった.女性は年代による差は認めず,各年代とも27-28%であった. 2.筋量に脂肪量を加えた体格分類と日常身体活動量との関連 男性では,筋量によらず脂肪量が過多の群(体脂肪率の男性25%,女性35%以上;"Obese[O]", "Sarcopenic Obese[SO]")は,筋量が過少でなく脂肪量の過多でないNormal[N]群より日常身体活動量は少なく,特に高強度の活動量が少なかった.女性ではO群はN群より日常身体活動量は少なかった. 3.筋量に脂肪量を加えた体格分類と6年間の筋力変化との関連 男性の握力において,筋量が過少で脂肪量は過多でないSarcopenic[S]群は,6年間に筋力が顕著に低下するリスクがN群の2.4倍であった.女性の膝伸展筋力では,O群の筋力低下リスクはN群の2.0倍であった.
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