研究課題
本研究の目的は高齢者が年々増加を続ける日本において、高齢者の食生活を少しでも豊かにするためにプロテアーゼを活用できないかという発想に基づいている。プロテアーゼは、食品加工において非常に重要な役割を果たしており、発酵食品を多く生産する日本ではプロテアーゼの働きを利用した食品が数多く見受けられる。本年度は栄養的にもまた、嗜好の面からも高齢者の食事に適すると考えられる大豆を試料としてプロテアーゼを用いた高齢者向け食品の開発に着手した。代表的な大豆製品である豆腐はタンパク質に富み、淡白な味は幅広く調理に利用されている。しかし、近年豆腐の消費量は伸び悩んでいる。豆腐はニガリなどの凝固剤を用いて凝固されるが、チーズのようにタンパク質分解酵素を用いてゲル化することによって、豆腐とは異なる食味と物性を兼ね備えた食品の作出が可能であると考え、各種のプロテアーゼを用いてゲル化製品作出を試みた。その結果、アスパラギン酸型プロテアーゼに属するプロテアーゼを作用させることで、良好なゲルを作製することに成功した。本酵素は豆乳をパパインのように低分子化することなく、部分的に水解することで良好なゲルを形成し、苦味も生じなかった。来年度はゲル化させた豆乳を用いた調理品の創出を考えている。また、市販のプロテアーゼ製剤を用い、豆腐に作用させたところ、豆腐の物性は著しい変化を生じた。ゲル状の豆腐は、はっきりとした破断点を示さなくなった。官能検査においてはチーズ様の食感を示すという評価を得た。また、食味も好ましいと評価され、これはプロテアーゼ製剤によって旨みペプチドや遊離アミノ酸が生成したためと考えている。
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