(目的)高齢者及び嚥下機能が低下している場合には、誤嚥の危険性があり、咀嚼・嚥下しやすい食品の開発が望まれている。主食となる米飯においては、流動食にするのではなく米飯のテクスチャーを保つことがのぞまれている。そこで、本年度は、水分量を変えて炊飯した米飯及び食塊の物性を調べ、咀嚼・嚥下しやすい条件の検討を行った。 (方法)白飯、全粥、七分粥、五分粥の4種類と白飯食塊を調製した。各種条件で調製した米飯の破断特性、テクスチャー特性をレオメーター(株式会社山電RE2-33005S)を用いて測定した。さらに、荷重・除重時間は各々60秒とし、クリープ特性の測定を行った。試料荷重は各試料の線形性の範囲内荷重で行い、得られたクリープ曲線を一般化フォークト模型に近似させ、粘性率、弾性率を求めた。 (結果)全粥および七分粥の破断応力は、白飯の破断応力の約1/9および約1/24程度であった。五分粥と白飯食塊の破断応力は同程度であり、全粥の約1/5、白飯の約1/40〜1/45の値を示し、「ゾルの中に固形物がある状態」(厚生労働省高齢者用食品の基準)の範囲内であった。テクスチャー特性において、全粥のかたさ荷重は白飯の約1/7程度であった。全粥のガム性荷重は白飯の約1/6、付着性は約1/2の値を示したのに対し、凝集性は白飯より全粥の方が大きな値を示した。加水量が増えるほど、かたさ荷重、ガム性荷重、付着性は低下したが、凝集性は増加する傾向が見られた。クリープ解析の結果、いずれも6要素型モデルとして近似することができた。白飯食塊の弾性率E0は全粥に比べ同等または高い値を示すものもあるが、粘性率ηNはかなり小さな値を示すことが明らかとなった。咀嚼・嚥下しやすい条件についてはさらに検討が必要である。
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