本年度は、研究の目的に基づき、以下の通り研究を遂行した。 (1)比較教育学的アプローチ:フィンランドのユバスキュラ大学とヘルシンキ大学において科学教育政策(具体的には科学カリキュラム)について資料収集を行った。その際、国家レベルのカリキュラムと地方レベル(学校レベルを含む)のカリキュラムの関係について焦点化し調査した。その結果、カリキュラムに関して、国家の指針が設定されているものの校長や教師に大幅な裁量権が与えられていることが明らかとなった。また、科学教育研究者に対してインタビューし、教師教育に関する欧州連合とフィンランドの教員養成カリキュラムとの関係性について明らかにした。イギリスに関しては、カリキュラム・ポリテックスの視座から2006年度から実施されるナショナル・カリキュラム及びそれに呼応して開発されたプロジェクトを分析した。その結果、わが国の新しいカリキュラム策定においては、誰を対象とした科学教育かをまず明示し、その目的論から内容構成を行う必要があることなどの示唆を得た。 (2)歴史的アプローチ:わが国の大正期における(旧制)中学校理化学教育振興運動を具体的トピックスとして取り上げ、教育政策に対する国家と地方の関係について分析した。その結果、地方の財政的理由、行政の考え方、教師の意欲等々を要因として、国家の教育施策がそれぞれの地方に同じように伝播したわけではないこと、法令の適用範囲を超えて地方では児童・生徒実験が実施されていてことなどを明らかにした。 (3)政策科学的アプローチ:政策科学研究及び教育政策に関わる内外の文献を収集し、次年度以降の分析方法を検討し、分析のための指針を明らかにした。
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