この研究では、近年の高速大容量メディア技術の長足の進歩によって提供することが可能となった人間の可知覚領域をこえる視聴覚情報によってひきおこされる脳基幹部およびそこから前頭前野に投射する報酬系神経ネットワークの活性化現象(ハイパーリアル・エフェクト)を応用し、生理学的背景に基づく学習意欲増進と脳深部の活性低下に起因する心身の病理の予防のための方略を開発するための基礎的検討をおこなうことを目的とする。 1 学習意欲増進に寄与する視聴覚情報の構造特性の分析:学習意欲増進とのかかわりが期待される脳の報酬系ネットワーク活性化効果が、熱帯雨林を代表とする自然環境が発する可聴域上限をこえ不規則で連続的な振幅および周波数構造の非定常変化をともなう空気振動によってもたらされることに着目し、それらの信号構造の特徴抽出を行った。とくにその非定常性を、最大エントロピー法を応用して定量化する手法ならびに分析プログラムを開発した。あわせて、そうした自然環境のもつ視覚情報の信号構造についても、電子記録物をもとに分析をおこなった。 2 実証実験用教材コンテンツの開発:上記の結果をふまえて、基幹脳ネットワーク活性化に著効が認められる可聴域上限をこえる高周波成分を、その非定常性を保持しつつ増強するための新たな音響処理機材を導入して、実験用音試料を編集した。 3 視聴覚情報が情動系・行動制御系・生体制御系に与える影響の解明:視覚情報が脳深部活性におよぼす効果を、磁気共鳴機能画像によって検討することを可能ならしめるために、高密度映像呈示システムを構築し、その効果について予備的な検討をおこなった。
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