試験結果から受験者を学習進度に基づいてクラスタリングする手法として、近年Rule SpaceMethod(RSM)が注目されている。この手法は、教育評価の領域から提案されてきた手法で、試験内の個々の問題(Item)とそれらを構成する最小の単元ゼット(Attribute)の関係を用いて、Itemの解答パターンから学習進度の似ている受験者を一つのクラスター(Knowledge State)に分類することを可能にする。科目の担当教員による「問題分析」を通して得られるItemとAttributeの関係により試験問題の構造を詳細に明らかにすることができ、これは当該科目の達成の度合いを測る基礎資料ともなる。 大学入試センターで研究が続けられている聡合某礎「問題は高校段階の学習達成度を測ることを主目的に作成されており、用いられる単元もシンプルなものが多いので、学習進度を分析するのに適していると考えた。この問題は全国3ケ所の大学でモニター調査を実施し、延べ1300名程の大学生からの項目反応が得られている そこで、総合基礎問題「数学」で用いられた問題の内、「J冊子」に含まれる27個の設問について、RSMの提唱者であるProf.K.Tatsuoka(Columbia大学)の助言を得ながら問題分析を行ない、最終的に19個のAttributeを特定した。そして、この結果を前述の項目反応に適用し、各被験者の学習進度をクラスタリングした。 これら一連の作業から、問題分析には特定教科の知識や応用力が必要であること以外に、Attributeの抽出には相当の試行錯誤を要することも判った。また、字習進度に基づいたクラスタリングが学習診断に有効に機能することが確認できた。 今後は問題分析の方法を改良すると共にると共に、より実践な設問について適用する。また、これら研究成果を関連の国内外の学会で発表する予定である。
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