研究概要 |
1.昨年来行ってきた花崗岩ドームの表層剥離による侵食速度のTCN解析を以下のように行った.韓国,ソウルの北方郊外にはいくつかの花崗岩ドームが存在する.この花崗岩ドームの表層には数多くのシーティング・ジョイントが発達しており,それらのシートは外側のものから順に剥離していっているように観察された.すなわちドームの表層は厚さ数十cmから数mの数枚の厚さのシートにより構成されており,それらのシートは階段状に配列をしている.最も外側に位置するシートをシート1と呼び,ステップが低くなる方向にシート2,3,4,5と呼ぶことにした.各シートの表面から花崗岩試料を採取し,TCN濃度を計測した.ターゲットの核種としては^<26>Alと^<10>Beを計測した.得られた濃度をもとに,各シートの露出時間を計算したところ,シート1は54.0kyr,シート2は20.2kyr,シート3は7.84kyr,シート4は5.83kyr,シート5は1.12kyrとなった. シート1は54,000年前に露出し,シート2は20,200年前に露出した,という結果から,シート2の上にあったシート1が剥離するのには54,000-20,200=33,800年を要したことになる.すなわち隣り合う各シートの露出年代の差が,それぞれのシートの剥離期間と読みとることができる.この剥離期間と各シートの厚さとの関係をみると,厚いシートの剥離期間は長く,薄いシートの剥離期間は短いこともわかった.両者の関係から,厚さ1mほどの厚さのシートが剥離するのに約13.5kyrかかることがわかった. 以上の結果をまとめEarth Surface Processes and Landformsに投稿し受理された. 2.花崗岩の岩盤河床からなる,木曽川・寝覚めの床の下刻速度をTCN解析を用いてアプローチした.現在,この分析を鋭意行っている段階であり,結果は2006年4月にでる予定である. 3.上記2つの花崗岩の侵食速度との対比の意味で,石灰岩の溶解(侵食)速度に関する調査を併行する予定であり,3月に喜界島のペデスタル(台座岩)の高さから侵食速度を求めるための調査を行う.
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