北極振動指数と太陽磁気活動の指数(aaインデックス)を比較した予備的検討により、特に5年以上の周期変動に関して、北極振動は太陽活動変動とかなり良く対応することが分かっていたが、対応する期間における太陽黒点数との比較検討などにより、この関係が確かめられた。北極振動指数は、1970年以降、aaインデックスとの相関が高く、また1950年〜1970年の期間は逆相関となる。さらに、1900年までの期間について、相関の期間と逆相関の期間が見られた。 北極振動にカオス解析を適用したが、明確なカオス的挙動は見られず、むしろランダムな挙動に近いと言える。また、北極振動指数の周波数解析では弱い1年周期が見られるが、指数の絶対値の周波数解析では明確な1年および0.5年のピークが見出された。一方、南極振動ではこのようなピークは見られなかった。これは、陸(北極振動)と海(南極振動)における大気摩擦の違いによるものと推察された。 北極振動と太陽活動の相関に対する一つの解釈は、紫外域の強度変動による成層圏における大気循環の変化である。しかし、北極振動指数と太陽黒点数の対応よりもaaインデックスとの対応の方が良い期間が見られるので、紫外線強度変動のみで解釈するのは無理と思われる。北極振動の成因については定説がないが、筑波大の田中らの解析によれば、北極振動は大気の順圧的自由振動モードであり、振動周波数の固有値は0である。従って、任意の外力によって励起され得る。太陽風やフレア、さらに極冠電離層コンベクション電位などに現れる太陽磁気活動が北極振動に作用する可能性を探るには、この自由振動機構が候補となると考えられる。
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