研究課題
本年度はまず名古屋大学構内に設置しているライダー装置を昼間の観測が可能であるように改良した。昼間は太陽光線によるバックグランドノイズが大きく、これまで使用していたライダーの受信系では精度良い測定に十分なSN比が得られなかった。このノイズを低減するため、望遠鏡の光学系を改造して、受信視野を0.5mradにした。さらに送信レーザ波長の光のみを通す干渉フィルターを狭帯域のものに交換した。これらの改良で昼間でも高度15km程度までは良好なSN比での測定が可能となった。また従来Nd:YAGレーザの第二高調波(53nm)のみで観測していたものを基本波(1064nm)における受信も同時に行えるように受信部分を改造した。改造したライダーを用いて、昼夜連続的な観測を比較的天候の良い条件の日に行った。平均すると週1〜2回で、一回の観測で一昼夜通して観測を行った。この結果、境界層上端に観測された雲から地上まで降りてくるようなエアロゾルの層がしばしば測定することができた。このようなエアロゾル層は波長依存性が通常の境界層内のエアロゾルより小さく、より粒径の大きいエアロゾル粒子からなることを示唆している。また、偏光解消度は小さく、球形に近い形をしていることが予想される。本年度はまた、夏季乗鞍岳の東京大学宇宙線観測所にてシーロメータ(小型ライダー)を設置し連続観測を実施した。あいにくエアロゾルのサンプリングを同時に実施することはできなかったが、境界層高度の変化に伴いエアロゾル濃度の変化が見いだされ、エアロゾルの物理的・化学的な変化を示唆しているようである。来年度はサンプリングを同時に実施する予定である。
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Journal of the Atmospheric Sciences Vol.63・No.未定(accepted)