研究課題
1.国立天文台クリーンルームがALMAプロジェクトのため急遽移設されることになりHEB素子の製作が当面困難な状況となった。このため東京大学大学院物理学教室山本智教授のクリーンルームにHEBM素子の開発拠点を移し、新たにNbTiN薄膜製膜システムを立ち上げ、準光学HEBM素子の製作を開始した。新システムによるNbTiN薄膜が良好な超伝導特性を示すようになり、これにあらたに設計した0.2,1,8-2.5THz帯の準光学アンテナを集積した。また、HEBM素子の高帯域化・高感度化、既存の装置との整合性を考え、従来の水晶基板を酸化マグネシウムの結晶に切り替えた。これに中国へ製作依頼した酸化マグネシウムのレンズを集光系に組み込むことで、入力信号に対する周波数応答の評価を進められる目処がたった。来年度は、既存のシステムを用いて200-650GHz帯でヘテロダイン性能評価へと繋げる他、フーリエ分光器により、形成した1.8-2.5THz帯の準光学HEBMの周波数応答を評価し、実用に耐えるTHz検出器の完成を目指す。2.まず放射伝達計算のモデルを構築した。対流圏・生物圏におけるOHの放射スペクトルを、長行路のパスレングスで計測することを目指しているが、計算の結果、地上付近(<高度4km)の大気の吸収は激しく、スペクトル強度が数十mKと非常に弱くなり、現況の計測手法・システムでは計測が難しいことが分かってきた。しかし、高度7km程度の対流圏であれば1K程度の強度の検出の可能性があることも分かってきた。OHは成層圏に上るほど存在量が大きくなり、高度10km以上であれば強度は数〜数十Kに達し、十分可観であることも確認できた。そこで、当面のターゲットとして7-15kmの対流圏OHの観測を考え、気球や航空機へのHEBM受信機の搭載も見据え、観測手法とHEBM素子の最適化を検討中である。
すべて 2006
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Proceedings of the International Conference on Submillimeter Science Technology(ICSST 04) in press