本研究課題の目的は、大気浮遊粒子の停留的な再循環を予測させる都市化(路面舗装、人工熱消費、高層ビル)が花粉の飛散挙動に与える影響を明らかにすることである。そこで平成17年度においては、固気混相流の数値計算プログラムを作製するとともに、2次元平板上の流れを供試流れ場として可視化計測し、計算手法を評価した。なお供試粒子としては、花粉粒子とほぼ同じ大きさ、形状、密度を有する石松子を用いている。 以下に数値計算の概要を記す。 (1)気流に関しては、連続の式、N-S方程式、J&Lの低Re型k-εモデルを連立させ、これらを有限体積法で離散化し、TDMA法により解いた。 (2)固体粒子に関しては、球形である、分子間の衝突は無視できる、粒子は流れに影響を与えない、粒子に作用する外力は気流による抗力と仮想質量に働く慣性力のみとして近似できる、として支配方程式を誘導し、流れ場と同様に数値計算を行った。 以下に可視化計測の概要を記す。 (1)滑面平板先端において供試粒子を速度ゼロで混入し、下流の粒子速度を流跡線解析により計測した。 (2)3種類の粗さを有する平板上に供試粒子を散布し、平板から跳躍、浮遊する供試粒子の速度をPTVにより計測した。 可視化計測と数値計算により明らかとなったことを以下に列挙する。 (1)供試粒子が完全な球でないため粒子速度のばらつきは大きく、この傾向は気流速度が遅いほど顕著である。例えば、主流速度1.5m/sの流れ方向分布においては、境界層部で約4割の差異が生じている。 (2)時間平均された粒子速度の分布は気流速度の分布にほぼ等しく、その違いは1割以下である。このため、数値計算により得られた粒子速度の分布は、計測結果の平均値をよく予測している。 (3)壁面粗さが大きい場合には、壁面近傍の速度が遅くなる。このため、粒子が跳躍から浮遊に至るためには、より速い気流速を必要とする。
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