本研究課題の目的は、人体へ侵入する花粉量が都市化により受ける影響を明確にすることである。例えば、都市では、ヒートアイランドのような再循環型の対流や、東京ウォールのような大気の流れを妨げる現象が散見される。加えて、路面舗装率が高く、落下した花粉は吸着されづらい。このため、都市部においては、花粉が停留的に再循環をしている可能性があり、しかも、地表面から上昇する気流にのり、下方より真っ直ぐ鼻孔に侵入する花粉も少なくないと予測される。 そこで、気流により花粉が飛散する現象、花粉が地表面から再浮遊する現象、吸気により花粉が鼻孔に侵入する現象の3種類に、現象を大別して検討を加え、それぞれ以下の知見を得た。 気流により花粉が飛散する現象に関して:粒子の衝突や流れに対する影響を無視し、さらに、粒子形状を球とした上でオイラー法的に解析するモデルを作成した。そして、このモデルにより数値計算を行い、可視化計測結果と比較・検討してこのモデルを評価した。その結果、2次元平板上境界層においては数値計算結果と可視化計測結果は定量的にも一致し、本モデルにより、花粉の飛散挙動の予測が充分に可能であることが分かった。加えて、花粉の飛散挙動の予測においては、外力として気流による抗力のみを考慮すれば充分であることも分かった。 花粉が地表面から再浮遊する現象に関して:上記のモデルでは、粒子の転動・滑動、マグナスカとサフマン揚力等を考慮したが、地表面からの再浮遊を予測することはできなかった。このため、実験により検討した結果、再浮遊においては跳躍が重要であること、特に、粒子の回転により【反射角>入射角】となることで再浮遊に到ることが分かった。 吸気により花粉が鼻孔に侵入する現象に関して:人間と同様な鼻からの吸気をおこなう頭部ファントムモデルを用いて可視化計測を行い、数値計算結果と比較した。ただし、計測結果と計算結果では、計算結果の速度が50%程度以上速く、定性的な一致に留まった。
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