研究課題/領域番号 |
17651022
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
武田 淳 佐賀大学, 農学部, 教授 (20045066)
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研究分担者 |
稲岡 司 佐賀大学, 農学部, 教授 (60176386)
五十嵐 勉 佐賀大学, 農学部, 助教授 (30202857)
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 講師 (60301355)
辻 一史 佐賀大学, 農学部, 助教授 (00253518)
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キーワード | 日韓の干潟 / 水族資源 / 半海半陸 / 癒し / 地域資源 / 干拓 / 生態人類学 / 伝統的採捕技術 |
研究概要 |
干潟は、潮の満干が一日二回ずつ繰り返されるために、陸と海を兼ね備えた半陸半海的生態系である。人類は長い間、この「海の畑」に産する動植物資源を採捕・利用してきた。住民が伝統的に利用してきた干潟の水族資源の汎用性と潜在性を調査探求してきた。例えば、干潟に産する「ユムシ」や「エボヤ」などは、日本ではほとんど消費されないが、韓国では日常的に年間を通して頻繁に食卓にのぼる。魚介類の消費にかぎらず、干潟には未開発のまま、ほぼ無尽蔵に眠っている資源があり、その伝統的な採捕技術の多様性も看過できない。干潟に産する食用水族資源の伝統的な利用や採捕技術に学際的、国際的、かつ地域資源学的なメスを入れ、その成果を基に干潟を利用したエコツーリズムに還元する試みは、単に自然環境への直接的な回帰を探索するものでないが、干潟環境という特異性や半海半陸という独自性がもたらす癒し効果も見逃せない。佐賀県鹿島市で毎年5月に開催されるガタリンピックは、その意義が社会的に評価・見直されている事実は、実に優れた事例として、その背景などを目下、分析中である。 平成17年度は高哲燠、趙慶萬、韓相福、李応吉各博士の韓国サイドのエクスパートたちと互いに現地調査の連携しながら、干潟資源の伝統的採捕手段・利用・変容等について調査を進めた。また日本の干潟面積の40%を占める佐賀県をはじめとして、熊本県、福岡県、長崎県などの有明海に面する集落で現地調査を行い、平成18年度も同様な現地調査を進める。 折しも3月17日の韓国ソウル最高裁は原告の訴えを棄却し、「韓国の諌早」と言われるセマングム干拓事業を再開する決定を下した。今後、本研究の学術的意義が増幅するものと確信している。さらに人類が利用できる干潟水族資源の有用性・潜在性と干潟環境がもつ癒しの場としての模索は、将来の食料危機に対処できる基礎的かつ緊急性をもつばかりか、重要であろう。
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