研究課題
水や植物に含まれているミネラルの多くは、流域の地質に由来する。本研究は、岩石に含まれているストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、ネオジミウム(Nd)といった元素の安定同位体組成が、その成因の多様性を反映して地域的に大きく変化することを利用して、ミネラル水や農産物などの産地を、高い確度で判別する指標と方法の確立を目的としている。昨年度に引続く研究の結果、研究分担者の山下の努力もあり、数ナノグラムと微量でも、最先端の表面電離型質量分析装置を用いて、Sr、Nd、Pbの安定同位体組成を高精度で分析できるようになった。とくに水のストロンチウムの安定同位体分析は、一度に36試料を処理できるシステムを構築できた。これらの方法を用いて、わが国の市販のミネラル水を購入し、約150本についてSr同位体分析を行った結果、予想通り、地域的な違いが明らかになってきた。これらの相違は地質環境によるものと考えられ、微量元素組成とあわせて産地判別の有力な方法になりうることを確認できた。さらに生物試料の分析についても予察的な検討を実施した。試料としては、セーフガードの対象となった、ニンニクとショウガの他、鮎の試料についても検討を進めた。鮎の骨の鉛同位体組成が岩石より日本の大気鉛の値に近いことが判明しつつある。いっぽう、大気鉛の安定同位体組成は、地域によって異なることを国際誌Atmospheric Environmentに報告した。これらの結果から、鮎をはじめとする生物の鉛同位体組成が、大気鉛の影響を受けて、地域によって異なる可能性が示唆され、更に検討を進める予定である。19年度は入手した多数の試料について、Ndの安定同位体分析を確立すると共に、Sr-Pb-Nd同位体分析を精力的に進め、これらを指標に用いた産地判別法について更なる検討を行う。
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Atmospheric Environment
ページ: 7409-7420