研究概要 |
本年度はトランスジェニックセンサーマウスの作製とその特性の解析を目標に研究を行い、当初の目的をほぼ達成することができた。まず、センサー配列DRE(ダイオキシン応答配列)の下流にレポータータンパクSEAP(分泌型アルカリフォスファターゼ)をコードする遺伝子を挿入した遺伝子構造を作製した。この遺伝子構造をダイオキシン類に対し感受性の高いC57BL/6マウスの受精卵に注入してトランスジェニックセンサーマウスを作製した。PCR解析にて外来遺伝子が導入されたマウスを選別し、4系統のトランスジェニックマウスを樹立した。このうち1系統はベースの血中SEAP活性が高値を示し、センサーマウスとして問題があることが明らかになった。そこで残りの3系統にダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)を強制経口投与し、その後経時的に尾静脈から採血(10-20μl)を行ない、血清サンプルを用いて血中のSEAP活性を測定した。その結果1系統のトランスジェニックマウスにおいて高度なダイオキシンに対する応答性が認められ、これをDRESSAマウスと名付け、センサーマウスとして使用することにした。DRESSAマウスに5μg/kg体重の2,3,7,8-TCDDを強制経口投与した場合、血中のSEAP活性の増加は24時間以内に認められ、数週間でピークに達し、そのレベルはベースの100倍前後にまで達する事が明らかになった。現在このDRESSAマウスの特性を更に詳細に検討をしている段階であるが、以上に述べたこのDRESSAマウスの高い反応性は、樹立したセンサーマウスが環境モニタリングにおいて有用であること、すなわち有害化学物質を含む外気や室内空気に反応して優位なレベルのSEAPを発現産生することを強く示唆する。
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