遺伝子機能の研究において理想的な解析系は生きた個体で評価することである。「赤外レーザを用いた個体単一細胞遺伝子発現システム」は、「生きている個体内」の目的とする細胞で、しかも目的とする発生時期に発現誘導できるシステムとして開発を進めている。これをクリプトクローム(cry)ファミリーの機能解析に適用し、生物の光環境への適応戦略を解析行うことが本研究の目的である。 当研究室ではcryの転写活性を測定するためのルシフェラーゼプロモーターアッセイ系を培養細胞系で確立しているが、個体において評価するためにトランスジェニックメダカの作製を行った。まずメダカcryのプロモーターのクローニングを行った。cry1a、cry1b、cry2の3種類のメダカcDNAおよびその上流領域を得た。概日リズムを刻む遺伝子群特有に存在するE-box配列を検索したところ、cry1a遺伝子にはE-box配列が翻訳開始点の上流約1kbに存在することを確認した。この上流領域をトランスジェニックメダカのプロモーターとし、下流にデュアルカラールシフェラーゼレポーターを繋いだベクターを作製した。それを合計187個のメダカ有精卵に微量注入を行い、89卵が孵化した。3ヶ月間育成して成魚となったのは88匹であった。40成魚をスクリーニングし、生殖細胞にトランスジーンを含む11個体を同定した。プロモーターが目標通りに機能するかをトランスジェニック個体由来の細胞を用いて評価した。トランスジェニック胚から樹立した培養細胞株を明暗の照明周期で2日間培養した後に、暗黒下で、ルシフェラーゼによる発光量の経時変化を測定した。その結果、複数のトランスジェニックメダカ由来の細胞が約24時間のリズムを刻んでいることを確認し、このトランスジェニック系統のcry1aプロモーターが正常に機能していることを確認した。
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