本研究は、難分解性有機塩素化合物を、ほとんどエネルギーを消費することなく、安全に分解する、モジュールの作製を目的としている。 研究は二年間の予定で、最初の一年間は、モジュールを製作し、それを用いた予備的な分解実験を行い、市販の難分解性有機塩素化合物又は類似物質に対する有効性を検証する。 今年度は、閉鎖系の難分解性有機塩素化合物分解モジュールを試験的に作製した。申請時では、光触媒を添加した珪藻土を棒状に成型する予定であったが、垂直上向き方向への珪藻土の吸水効果がそれほど大きくなく、受光部も大きな面積を必要とするため、様々な径(0.3〜0.7mm、0.7〜1.3、2.0〜3.0、3.0〜5.0)の光触媒添加球状珪藻土試料を型枠に入れて、外観を平板状にする変更を行った。この光触媒を添加した珪藻土については、昭和化学工業株式会社と共同研究契約を結び、同社が保有する特許技術の利用許可を得た。太陽光の集光については、光触媒の有効作用温度が600℃以下のため、受光部の焦点温度がこれを超えない様に調整を行った。但し、本研究は追加採択されたものであり、盛夏における温度上昇に関するデータを取得していない。 以上の改良を基に、分解モジュールを試作し、酸化還元反応による有機化合物分解の確認を行った。具体的には、平板状の光触媒添加珪藻土集合体の下側を有機化合物のジオキサンに浸し、それを珪藻土の毛管現象によって吸い上げ、ブラックライトからの紫外線を同珪藻土集合体上側の受光部に照射した。ジオキサンの光触媒による分解実験は、既に他の研究者によって行われており、本実験でも、これまでと同様の結果が得られた。 問題点としては、本来の目的である難分解性有機塩素化合物を分解する際には、物質によって高温条件が必要な場合も有り、その時生ずる気化した反応生成物や水蒸気による紫外線及び赤外線の吸収を抑制する工夫が必要である。
|