屋上緑化におけるセダムの代替植物として、植物群落の反射率(アルベド)が高いことで、植被が受ける放射エネルギー(純放射量・Rn)が小さい黄緑色系の「高アルベドサツマイモ」を導入し、形態・生態学的比較と熱収支解析とを組み合わせ、気温と地温(建物内温度)を効率的に低減させる機作を明らかにした。 島根大学生物資源科学部3号館屋上に設置した高さ0.1mの木枠内に屋上緑化用軽量土壌をいれ栽培圃場とした。従来品種の沖縄100号、コガネセンガン、すいおう、なると金時、ベニアズマ、ベニコマチ、葉身の色・形状が従来品種と異なるテラスライム(黄緑丸葉)、テラスブロンズ(紫丸葉)、切葉緑系統、切葉紫系統、黄緑新系統を5月下旬に、栽植密度2.5株/m^2で移植した。潅水は自動潅水器を用い約8mm/dayを与えた。地表面が受ける純放射量・Rnは潜熱伝達量(LE)、顕熱伝達量(H)及び地中熱伝導量(G)として消費される。そこで、8月下旬から熱収支式各項(Rn、LE、H、G)、地温、体積土壌水分含量を測定するとともに、個体群構造を測定した。 高アルベドサツマイモであるテラスライムと黄緑新系統は従来品種と比較して葉色値が低く、反射率が20〜25%高いことにより日射吸収率が小さくRnが少なかった。一方、LE、H、GをRnとLE/Rn、H/Rn、G/Rnの積としてそれぞれ表すと、LE/Rnは約8%の品種間差があり、高いLAIによるLE/Rnの増加によってH(気温)は低下した。地温(建物内温度)は高いLAIによるG/Rnの減少によって低減できた。従って、Rnが従来品種よりも一貫して小さく、且つ高いLAIを維持した高アルベドサツマイモは、気温・地温を効率的に低減した。ただし、過密な葉群構造による蒸散の抑制が問題となる場合があった。
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