1日当たりの潅水量を同一にした条件で、潅水の頻度と時間を変化させた3つの潅水方法でサツマイモ品種テラスライム(丸葉黄葉)とベニアズマを栽培し、植被展開速度と物質生産を比較した。 島根大学生物資源科学部3号館屋上に設置した高さ0.1mの木枠内に屋上緑化用軽量土壌をいれ栽培圃場とした。供試サツマイモ品種を5月下旬に、栽植密度2.5株/m^2で移植した。潅水は点滴潅水チューブに潅水タイマーを用いて日当たり約8mm/dayとなるよう与えた。朝1回潅水を行う区(朝1回区)、朝と昼に行う区(朝昼区)、約20分間隔に1分間潅水を行う区(常時潅水区)の3つの潅水処理を行った。植被展開速度をデジタルカメラによる画像解析法で求めるとともに、8月下旬から熱収支式各項(Rn、LE、H、G)、地温、気孔伝導度、土層毎の体積土壌水分含量を測定し、収穫期にバイオマス調査を行った。 いずれのサツマイモ品種も葉面積が拡大する時期の植被展開速度は朝1回区に比較し、朝昼区、常時潅水区で大きく、常時潅水区が早期に植被を確立した。収穫期のバイオマス量も朝昼区、常時潅水区は朝1回区に比較して大きかった。朝1回区の気孔伝導度は午前中高いものの午後に急激に減少したのに対して、朝昼区、常時潅水区の気孔伝導度は午後も高く維持されていた。このことは、朝1回区の畝の表層土壌水分含量が午後に低下することに加えて、サツマイモの根長密度が表層に多く、下層には少ない根系特性を持つことから水分ストレスが生じ、物質生産が抑制されたものと示唆された。従って、日中の畝表層の土壌水分含量が高く維持されるよう、頻繁に灌水を行うことにより、日蒸発量程度に使用水量を限定した場合でもサツマイモの植被展開と熱低減が効率化できると結論された。
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