本研究では、海産無脊椎動物ホヤから抽出したバナジウム結合タンパク質であるVanabinの遺伝子を大腸菌株に発現させ、重金属センサーとして利用するための開発を行なった。 1.野生型Vanabin2の金属結合能に対するpHの影響を調べた。pH7.5では20個のバナジウムイオンがVanabin2に結合するのに対して、pH4.5では4個しか結合しないことがわかった。銅イオンはいずれのpHでも4個結合した。 2.部位特異的変異導入法によってVanabin2タンパク質の金属結合部位に関する変異体を作成し、バナジウムや鉄、銅などの種々の金属との結合能力に与える影響を調べた。 3.Vanabin2タンパク質の構造を円二色性偏光分析によって解析した。pHの変化および金属イオンの添加による構造変化を調べたが、特に大きな構造変化は無かった。ジチオトレイトールの添加によってSS結合が切断されると円二色性偏光は大きく変化したが、金属の添加による変化はなかった。 4.種々の蛍光キレート物質の、バナジウムイオンによる蛍光強度変化を調べた。カルセインの蛍光がバナジウムの価数と濃度によって変化することがわかった。カルシウムグリーンの蛍光はバナジウムイオンの添加によってほとんど変化しなかった。
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