研究概要 |
本研究は環境問題の観点から有機溶媒の代替として注目されている超臨界CO_2流体(scCO_2)を媒体とした,2種以上のポリマーからなる複合高機能性高分子微粒子の合成に挑戦し,この媒体系の特徴であるscCO_2によるポリマーの可塑化効果を有効利用した特異な異相構造からなる複合高分子微粒子の作製の可能性を明確にすることを目的としている。本年度は特に複合粒子の表面及び内部の異相構造が得られる最適条件の検討を行った。 scCO_2流体中で,あらかじめ作製した約2ミクロンのポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子存在下スチレン(S)モノマーのシード重合を行うと,通常の有機溶剤系では観察されない,連続相がPMMAでポリスチレン(PS)ドメインが粒子内に多数ある海島構造が観察され,さらにそのPSドメインのサイズは粒子表面近傍では大きく,粒子中心部に向けて傾斜的に小さくなる海島傾斜構造が観察された。PMMAシード粒子の大きさ,開始剤濃度,重合温度,スチレンモノマーの添加速度など実験条件を詳細に検討した結果,例えば,開始剤濃度が高いほど粒子内部のPSドメインの割合が少なく,次に低モノマー濃度下でも粒子内部にPSドメインはあまりみられず,粒子の表面付近において大きなPSドメインを有するといった傾向が観察された。逆に粒子径を小さくするなどスチレンモノマーが浸透しやすい条件を与えれば,ドメインの大きさがそろった異相構造が観察された。以上の結果より,scCO_2下において,任意に傾斜異相構造を制御できる複合高分子微粒子の作製法確立へ向けよい手応えを得た。
|