研究概要 |
前年度,ナノメール間隔のギャップで対向させた金属エッジ構造にて,結合形エッジプラズモンが存在することを実験と計算によって示した.これを踏まえ,本年度は,より励起観測が容易な構造の模索,伝搬距離の入射光波長依存性検証と,エッジの丸みが結合形エッジプラズモンに与える特性変化検討を行った. 理論:数値計算法の一種である有限差分時間領域法を用いて数値解析を行った.100nmオーダの間隔のギャップで対向させた対向金属エッジ構造に沿って伝搬する結合形エッジプラズモンの特性が,エッジが半径Rの丸みを持つことでどのように変化するかを求めた.変化させた0〜150nmの範囲でRが夫きくなるとともに,(1)波数はより小さくなるが,伝搬できるモードの範囲で留まる,(2)ビーム径は大きくなるが,ビーム断面積3×10^<-3>μm^2以下を保っており,ナノ光導波路としての特徴は失うことがない,(3)伝搬距離は2倍程度まで大きくなり,容易に10μm程度の伝搬距離となる,との結果が得られた.入射波長を変えた計算では,633nmから900nmへ入射波長を変えると,伝搬距離が約2倍延びており,通信波長帯域では,100μm程度の伝搬距離が期待できる. 実験:伝搬実験で基板下部にあたった励起光のエネルギの一部が表面側へ散乱光を発生させることを防ぐため,ガラス基板上に直接導波路を作製せず,Cr膜,PMMA層,金や銀の蒸着膜という多層構造に集束イオンビーム加工装置による微細加工を用いて,対向金属エッジ構造を作製する技術を確立した.これにより,容易に励起観測ができるようになった.作製条件を様々に変えた試料断面を観察した結果,現在の作製手法ではエッジ部分はR=20nm以上の曲率半径で丸みを持つことが判明した. 以上の研究成果を,論文(6件)および国際会議(3件),その他国内の研究会(1件)と学会にて発表した.
|