酸化物強誘電体は、10-50μC/cm^2程度の巨大な表面電荷を持つ。このため、表面に電極が無いと、その漏れ出し静電場のエネルギーが著しく大きく、分域を形成して小さくすると考えられている。これは、通常強誘電体が絶縁体と見なせるからである。しかし、静電エネルギーで分域が規定されるのなら、電極無しでは、常に分域形成が静電エネルギーで制限されることになる。この影響は、極薄化すると甚大で、応用上も重要な問題である。目的:申請者らは、このような巨大な電界があると、強誘電体の最表面は単純な絶縁体と見なせないと提案し、初期検証として高真空中でBaTiO_3の表面伝導を測定し、支持する結果を得たが、特に、国内では、外的要因によるものとと考えられ受け入れらていない。 報告者らは、試料、実験装置、実験方法を再検討して、従来の疑問の全てに答えられるような検討を行なうため、本科研費を申請した。即ち、本研究の目的は、強誘電体に特有な新しい電子系の有無を確立し、存在するならその普遍性を例示し、2次元性等の本質的性質をマクロ・ナノスケールの実験で解明することである。今年度は、代表的強誘電体BaTiO_3の表面伝導を、10^<-10>-10^<-11>torrという超高真空で測定可能な独自の測定システム様々な条件を変えて測定し、強誘電体分極による本質的表面伝導層が存在することを確定した。その過程で、従来不可能と考えられた電場による電極無しの領域が分極処理できることを確定した。走査型圧電顕微鏡と電位顕微鏡を超高真空原子間力顕微鏡に組み込み、この比較により研究を行なった(超高真空での動作は世界的にも殆ない)。
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