自動車を初めとする工業製品は、盗難や製品の関わる事件などが起きた時に、当該物を特定できる情報がすぐに得られれば迅速な解決につながる。製品へ付加する除去困難な個別認証情報として増幅容易で配列決定も自動化できるDNAを利用することとし、昨年度に引き続き基礎的な検討を行った。 架橋剤による架橋をほどこした実際の塗装の0.8mgの塗膜片からのDNA抽出を、昨年開発した方法で行い、抽出液をPCRにより、45サイクル増幅を行った。得られた産物をクローニング法(得られたDNAを大腸菌のDNAに組み込み、その菌を増殖させた後に組み込んだDNAを含んだDNAを回収し、その配列をDNAシーケンサーにより解読する方法)によって配列解読を試みた。その結果、最初に塗装に加えたDNAと配列が全て一致することが確認できた。このことより、塗膜片0.8mgに含まれるDNA 0.8fmolという極微量のDNAの配列を解読できたことになり、本手法が基本的には用い得ることが、上記検討により確認された。 昨年度得られた結果として、100℃に5週間置いたDNA含有超微粒子中には、検出できるDNAが80分の1に減少した結果を得ていたため、今年度は、DNAの熱安定性を高める化合物の開発を検討した。好熱菌に含まれる、DNAの熱安定性を高めていると考えられている化合物を参考にして、類似の新規な数種類の化合物の合成を行い成功した。それらを含有させたDNA含有超微粒子の耐熱試験を行い、現在結果の解析を行っている。また、熱、水接触、油接触の長期耐久試験を行ったDNA含有塗装板の作成も既に行い、そこからの検出を試みている。
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