研究概要 |
本研究では,各種の災害のリスクを統合化して「マルチハザードリスク」として捉え,これらのリスクに晒されている人口(リスク曝露人口)を定量化し相対比較することにより,地域の潜在的なマルチハザードリスクの特性を理解することを目的とする。都道府県ごとに様々なリスクに対する曝露人口を集計することにより,どの災害リスクが地域に大きな影響を及ぼしているかを把握することができる。昨年度の成果を以下に記す。 (1)マルチハザードリスクに対する曝露人口の評価 昨年度は風水害・土砂災害・雪氷害・海溝型地震について,リスクにさらされる曝露人口の評価を行った。地震には海溝型地震によるものと活断層によるものの2種類がある。昨年度はこのうち海溝型地震のみを対象としたため,平成18年度は活断層型地震のリスクにさらされる曝露人口の評価に力点を置いた。 まず,市販されている活断層詳細デジタルマップに活断層帯IDや断層種別インデックスを付加し,GISデータベースとして整理した後,活断層のタイプや活動度別の存在傾向を分析した.次に活断層近傍地域の人口・建物数を算出し,活断層タイプや都道府県による偏りを分析した.北海道・東北,中国,九州地方は,存在する断層長の割に活断層近傍に居住する人口があまり多くないが,近畿地方では多くの人々が活断層極近傍に居住していることが分かった。この結果を都道府県別に見ると,近畿地方の中でも,特に大阪府,兵庫県,京都府で活断層の近傍に人口が集中していた。これを各都道府県の総人口に対する人口の割合で見ると,大阪府よりも,京都府や長野県,兵庫県で活断層近傍に居住する人口の割合が大きくなった。 (2)マルチハザードリスクから見た地域特性の評価とこれらに適した防災体制の検討 平成17年度と平成18年度の分析結果を統合させることにより,マルチハザードリスクの地域傾向を評価することができた。類似したリスク傾向を有する地域や,同じ地域ブロック内であっても異なるリスク傾向を有する都道府県を抽出することができた。また,各々災害リスクに関して現状の防災体制を分析し,今後,地域に求められる防災計画の方向性を検討した。
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