近年、台風、梅雨、地震等による堤防の決壊や斜面崩壊等の重大な地盤災害が頻繁に起こり、多数の尊い人命と多大の資産が損失している。このため、本研究は、甚大な被害をもたらす斜面崩壊や堤防の決壊等の地盤災害が、力学現象のみならず地盤の富栄養化等の生態系変化による生物劣化によっても誘発される複合現象であると考え、総合的な生態学的視点を取り入れ、地盤災害の誘発機構の合理的な解明の目的で行っている。 平成17年度は、主として、以下のように、広島県内の斜面の地盤災害危険箇所の富栄養化、土質、生物に関する調査と富栄養化物質の鉛直方向の地中輸送に関する簡易モデル実験を行い、地盤の富栄養化による地盤の生物劣化による地盤災害の誘発の可能性を調べた。 1)地盤生態系の富栄養化調査:C-Nアナライザーを用いて地盤生態系の富栄養化物質である炭素(C)と窒素(N)の鉛直分布の測定調査を行った。 2)土質力学的調査:硬度計を用いた地盤支力の測定調査を行った。 3)生物調査:走査型電子顕微鏡による地盤棲息微生物の観察を行った。 4)ビニールパイプに土を充填し、富栄養化物質の鉛直方向の地中輸送に関する簡易モデル実験を行った。 以上の調査と実験の結果、地盤が富栄養化すると地盤の支持力が低下し、地盤災害を誘発に大きく関係することがわかった。また、地盤が富栄養化したところには、多数の多様な微生物の棲息が確認できた。
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