1.担子菌の選択 遺伝子の標的化を行う際の担子菌を以下の要件によって選択した。1)ゲノム情報が公開されているもの、もしくはそれに近い種類。2)遺伝子導入が実際に行われており、研究および応用部門でのニーズがある担子菌。3)遺伝子導入するホスト細胞の状態が、アカパンカビの分生子により近いものを有する担子菌。以上の3つについて、国内外の担子菌研究者との情報交換、文献検索などの調査によってPhanerochaete chrysospoim(和名無し)における検討がいずれの条件を満たす担子菌であるとみなし、これを用いて検討を行うに至った。 2.非相同末端結合に関わる遺伝子の検索 公開されているPhanerochaete chrysospoiumのゲノム情報と、アカパンカビのゲノムデータベースを元にして、非相同末端結合に関わる、KU70、KU80などの遺伝子のホモログの存在を確認した。このホモログのアミノ酸配列は、ウシグソヒトヨタケCoprinus cinnereusのデータベースから探索した同じホモログ遺伝子のアミノ酸配列と極めて酷似しており、担子菌における非相同末端結合の保存性を伺わせた。 3.遺伝子導入ベクターの開発 遺伝子破壊を行うためのマーカー遺伝子として、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子を担子菌の中で発現するためのベクターを作製した。またプロモーターも担子菌ゲノムより単離したが、新に誘導系、構成的発現を行う系などに関わるプロモーターも単離して、効率的な発現を行うことが出来るように模索中である。 4.遺伝子導入方法の検討 担子菌において一般に行われる遺伝子導入方法は、酵素処理による菌糸のプロトプラスト化、ウィルスの感染等であるが、電気穿孔による試みはほとんど行われていない。今回の検討において担子菌の分生子に電気穿孔による遺伝子導入を試みたが、失敗に終わった。電気穿孔に関わる条件(胞子の懸濁方法、等張液の選択)と機器を変更して新に試みることを計画している。
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