研究課題/領域番号 |
17651111
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 研究拠点形成特任教員(特任助手) (60396744)
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研究分担者 |
川崎 広明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (60332623)
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キーワード | miRNA / 発現抑制 / 標的遺伝子 / バイオインフォマティクス / ゲノム |
研究概要 |
本研究では、バイオインフォマティクスによるmiRNA標的遺伝子の効率的な探索方法を確立し、それに基づく発現解析及び機能解析を行う事により、ヒトゲノムにおけるmiRNAの役割を包括的に理解する事を目的としている。 平成17年度は、主に組織別遺伝子発現データ及び、その遺伝子配列の検討を行い、標的部位を探索する為の最適な遺伝子データを評価した。遺伝子配列データベースには様々な配列が混在しており、遺伝子の部分配列や、転写・翻訳の完全に確認されていない配列等も含まれる。我々は、重複がなく正確性が評価された遺伝子リファレンス(Refseq)を用い、識別番号から、これらの信頼性の低いデータを排除した。また、Refseqで得られたデータと、より統合的な遺伝子データベースであるUnigeneの情報を連結させることで、適切なスプライシングバリアントの情報抽出法を確立した。さらに、ヒトおよびマウス間で保存された遺伝子をリンクさせ、予測された標的部位の種間保存性を付加する手法を確立した。標的遺伝子予測ソフトウェアに関しては、数種のソフトウェアの比較と評価を行い、パラメータの決定を行った。 一方我々は、ヒト神経細胞のTPAによる分化誘導過程で、miRNAのマイクロアレイ解析を行っており、いくつかのmiRNAの発現がTPAの刺激により上昇することを確認した。これらmiRNAが、神経分化に何らかの役割を果たすと仮定し、その標的遺伝子と、神経分化への関与について明らかにするため、実験的な解析を行った。神経分化に重要とされる、notchシグナル経路に働く最初の受容体遺伝子であるnotch1をモデルケースとし、notch1と部分相補的な配列を持つmiRNAのうち、TPAの刺激により発現が上昇したものを抽出した。次にこれらのmiRNAの発現ベクター及び、notch1遺伝子3'UTR配列をルシフェラーゼレポーター遺伝子へ導入した発現ベクターを作成、神経細胞に供導入した後、ルシフェラーゼ活性の測定により発現抑制の効果について評価した。その結果、miR23b-24-27bを含むいくつかのmiRNA発現ベクターの導入により、レポーター活性の減少が見られた。このことから、これらのmiRNAが生体内でnotch1遺伝子の標的として働き、神経分化に関与する可能性が示唆された。
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