ヒトに代表される哺乳類におけるmiRNAの発現制御機構を明らかとするために、昨年度までに完全長cDNAデータベースを用いて、miRNAの初期転写産物(Pri-miRNA)の構造を、全ゲノム的に解析し、数百種のマウスmiRNAの前駆体の構造を明らかとした。これをもとに、今年度はいくつかの興味深いmiRNAについてノックアウトマウスの作成を行っており、その表現型の解析を進めている。mRNAマイクロアレイによるトランスクリプトームから、特定のmiRNAをノックアウトした際に、同時にどのようなmRNAが変動するかを組織ごとにしらべ、これをもとに、miRNA標的遺伝子の同定を目指している。またプロテオーム解析およびメタボローム解析も行うことで、miRNAによる高次元の発現調節ネットワークを明らかにしようとしている。 一方で、pri-miRNA-223の構造をマウス・ヒト・ミドリフグゲノム間で比較したところ、その長さやエクソン・イントロン構造は極めて多様なのに対し、miRNA配列及びその転写調節領域は良く保存されていることがわかった。miRNAのこのような情報から、祖先型ゲノムの構造を推測することが可能であると考え、他のmiRNAの構造についても解析を進めている。
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