本研究は、外来遺伝子を搭載した組み換えポリオウイルスの増殖を指標にして、siRNAの効果を迅速かつ簡便に検出し定量化できる評価系を開発することを目的としている。本年度は、ポリオウイルス遺伝子に対するRNA干渉効果を判定する条件について検討した。 Vero細胞にポリオウイルス遺伝子に対するsiRNA(5種類)を導入し、4時間後にポリオウイルスワクチン株を接種した。19時間培養後、si3次いでsi18が高いRNA分解能を示した。一方、si10の効果はわずかであった。感染30時間後に生残細胞をcrystal violetで染色し、DMSOで抽出してOD570を測定したところ、si3で細胞死が抑制されていた。この時、陰性対照のsiGFPやRNA分解能のないsi10では、細胞変性にともなう感染細胞の強い円形化が認められたが、si3では、軽微であった。また、ウイルス蛋白の発現も、si10では強く、si3では非常に弱かった。感染性粒子の産生量は、si3およびsi18では、各々1/100および1/10に抑えられていた。 ポリオウイルス遺伝子に対するRNA干渉の程度には、ウイルス増殖の抑制と非常に密接な相関関係があった。ウイルス増殖の抑制は、細胞変性(死)の抑制として観察され、これは、RT-PCRによるRNAの定量や、特異抗体を用いた蛋白発現量の検出などの複雑な手順を経ることなく、顕微鏡による目視で検出することが可能であった。さらに、生残細胞をcrystal violetなどで染色し、その量を数値化することができた。以上のことから、RNA干渉を、ウイルス増殖を指標にして簡便に評価する系が確立しうるものと期待できる。 今後は、外来遺伝子搭載可能なポリオウイルスベクターを作製し、外来遺伝子に対するRNA干渉の程度を、ウイルス増殖ならびに増殖にともなって出現する生物学的現象を指標として評価できるか検討していく予定である。
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