当面の化合物ライブラリーとして、多様性に富む天然有機化合物ライブラリーの構築を行った。一般的なライブラリーは、コンビナトリアル化学を基本としており、化合物の多様性という面では心許ない。本研究では、多様性と意外性に期待して、天然から取り出される自然の化合物ライブラリーに注目した。既に、採取が進行していた北方圏自生植物の抽出作業を、更に進めた。配糖体、糖類を含め、できるだけ他種類の化合物を含む抽出物を得るために、メタノールを用いて、約600種類の抽出物ライブラリーの整備を行った。 天然物からの機能性物質選択的「つり上げ」のツールとして、近年、進歩の著しいフルオラス化学に着目した。フルオラス化合物とは高度にフッ素化された炭素鎖の総称であり、水や一般的な有機溶媒に不溶であり、高度にフッ素化されたフルオラス溶媒(例えば、過フルオロメチルシクロヘキサン等)にのみに可溶である化合物群である。この選択的可溶性を利用して、現在、固相合成法に匹敵するグリーン合成法が確立されつつある。本研究では、この選択的溶解性に着目し、機能性物質「つり上げ」タグとしての利用を試みた。また、本研究では、機能として、糖鎖選択的結合能に着目した。糖鎖、特に還元末端を有する糖鎖は、その構造上の特徴からアルデヒドとしての化学的性質を示す。すなわち、アルデヒドと特異的に結合する物質は、糖鎖と特異的に結合することになる。簡単なアルデヒドを有し、かつ、フルオラス部分を適当な大きさで持つ分子を設計し、その合成を行った。フルオラスタグの分子中における割合とその選択的抽出能を検討し、モデル実験での選択的抽出実験に成功した。
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